子供の吃音(きつおん)で悩んでいるお父さんお母さんは、本当に辛いです。
我が家の子供も、幼稚園に入園してまもなく、吃音を発症しました。
初めは、何が起きたのか理解できませんでしたが、これが吃音だと分かった時、ひどく落ち込んだのを覚えています。
気分が落ち込んだ日々が続いていましたが、このままでは駄目だと気付き、吃音について勉強することにしました。
吃音の知識を深めることができれば、完治できないにしても、吃音と上手に付き合うことができるかも知れないと思ったからです。
吃音について、たくさんの本を読んだところ、ある一つの気になるキーワードを見付けました。それは、
吃音の子供は、頭の回転が速い傾向にある
と言う情報です。
この情報を見付けた時、少しだけ心が救われた感じがしました。
私たちと同じように悩んでいるお父さんお母さんにも知って欲しいという思いから、この記事を書こうと思いました。
という訳で、この記事では、
について紹介したいと思います。
Contents
吃音の子供は、頭の回転が速い
「吃音の子供は、頭の回転が速い」という情報は、自ら吃音症でもあり、吃音の専門医でもある菊池良和さんの著書「吃音の世界」(光文社)に書かれていました。
内容は、次のような物でした。
2013年にオーストラリアで子供の吃音発症と生活環境について追跡調査した結果によると、以下のような結論を出しました。
(1)子供の性格は、吃音の発症には関係ない。
(2)母親の精神状態は、子供の吃音発症には関係ない。
(3)吃音の子供は、吃音でない子供に比べて、言語発達が良い。
1つ目の子供の性格が、吃音の発症には関係ないことや、2つ目の母親の精神状態は、子供の吃音発症に関係がないことなどは、子育てで悩むお父さんお母さんを勇気づけてくれる情報です。
そして、特に注目すべきは3つ目の「吃音の子供は言語発達が良い」です。
この研究結果をまとめた論文では、吃音は、「急激な言語発達の”副産物”である」と結論づけています。
つまり、吃音は、言語の発達面で劣っているのではなく、逆に進み過ぎているために始まると言っています。
なぜ吃音になったのか、子供が訪ねてきた場合は、こう言うと良いと思います。
「君の頭の回転が速すぎて、口がついてきていないんだよ」
少しでも子供の心がプラスに動くよう、吃音の子供の力になれれば嬉しいです。
吃音の子供がうまく話せない時は、大人の私たちがやさしく「君の頭の回転が速すぎて、口がついてきていないんだよ」と励ましてあげる。
吃音とは?
続いて、吃音の基本的な情報をまとめましたので、参考にしてみて下さい。
吃音の種類
吃音の種類は、3種類の症状があります。
(1)連発
(2)伸発
(3)難発
ひとつずつ、詳しく見ていきましょう。
(1)連発
「わ、わ、わ、わたしは」といったように、最初の語を繰り返すことを、
「連発」
と言います。
吃音の初期に現れやすい症状で、比較的、軽度の吃音と言われています。
(2)伸発
「わーーーたしは」のように、最初の語を引き延ばすことを、
「伸発」
と言います。
(3)難発
「・・・・・・・わたしは」のように、最初の言葉が出てこないことを、
「難発」
と言います。
吃音の重さで言うと、1の連発は軽度で初期にみられる症状。
続いて2の伸発と続き、3の難発は最も重い症状と言われています。
子供の頃に発症した吃音は、連発から始まり、続いて伸発の症状が現れ、大人になると難発の症状があらわれてくるケースが多いようです。
吃音を発症する確率
吃音を発症する確率は、
100人に5人
と言われています。
たった5%と思うかもしれませんが、5%ということは、小学校のクラスが1クラス33人だとすると、1クラスに1~2人は吃音症の子供がいるということです。
つまり、ほとんどの子供は、吃音症の子と接している可能性が高いということです。
思い返してみると、自分の子供の頃にも、上手にしゃべることが出来ない子供はいました。
ひょっとすると、その子も吃音だったのかも知れません。
子供の頃は、友達が吃音かどうかなんて、教えてくれる大人はいなかったので、知らないうちに吃音の友達を傷つけていたかもしれません。
吃音の子供がいると言うことを、世の中でもっと認知度が上がれば、知らないうちに傷つけてしまうのも防げるかもしれません。
また、男の子と女の子では、男の子の方が発症する確率が高いようです。
吃音症の子で、10人中8人が男の子と言われています。
男の子の方が、吃音になる確率が多い傾向にある。
吃音の発生時期
吃音は、ほとんど場合、2歳~5歳の間に発症するようです。
なぜ2歳から5歳の間で吃音を発症する子供が多いのでしょう。
その理由は、子供の言語発達レベルが関係すると言われています。
言葉の発達が早い子供は、2歳頃から三語文が話せるようになります。
三語文とは、「パパ かいしゃ いった」など、三語で文章として話せるようになる時期です。
この時期は、言語能力が著しく上達する時期であり、脳の発達と吃音の発症が関係しているという説もあります。
吃音は、急に発症する
吃音は、急に、短期間で発症することが分かっています。
以下は、アメリカ・イリノイ大学のエフド・ヤイリらが2005年に発表した研究結果です。
<吃音の発生期間>
1~3日 | 41% |
---|---|
1~3週間 | 32% |
4週間以上 | 27% |
このように、半分近くが三日以内に吃音を発症するという結果が出ています。
我が家も三日以内で発症しました。
うまくしゃべれないのに気付いた時、はじめは機嫌が悪いのかな? 眠たいのかな? くらいに気軽に考えていましたが、翌日も、翌々日も言葉がどもるので、これはひょっとして? と気付いた時には、普通に話せなくなっていました。
吃音の発症原因
ここからは、吃音の発症原因について紹介します。
吃音の原因については、いくつかの説がありますが、間違った説も多く存在します。
そして、誤った説によって苦しんでいるお父さんお母さんも多く存在します。
間違った説を信じ込んでしまうと、お父さんお母さんの精神を病む悪い方向に向かってしまいます。
ここでは悪い方向に考えないように、間違った説と、有力な説(最新の研究で正しいと言われている説)を紹介します。
【×間違った説】左利き矯正説
利き手を本来の左利きから、右利きに矯正された子供は、吃音を発生しやすい、と言われていました。
しかし、これは根拠の無い間違った説です。
科学的にも1940年代に行われたアメリカのウェンデル・ジョンソンの研究によって、因果関係が無いことが証明されています。
ちなみに私たちの娘も左利きです。
今も左利きで、右利きに矯正しようとしたことは一度もありません。
よって、もし子供の左利きを右利きに矯正したから吃音が発症した、と思っているお父さんお母さんがいましたら、それが原因ではありませんので、安心して下さい。
ご自分を責める必要は全くありません。
【×間違った説】厳しいしつけ
母親のしつけが厳しすぎるために吃音が発症する、というのが今でも強く根付いていますが、これも間違った説です。
この厳しいしつけが正しいと思われている原因が一つあります。
それは、「吃音は、7~8割が自然回復する疾患」だからです。
厳しいしつけを周りから避難されたお母さんは、優しく接しようと態度を変えます。
すると、ほとんどの場合が、吃音が治ってしまうのです。
それを見た周りの人は、やはり母親の厳しいしつけがいけなかったのだ、と誤った認識をしてしまいます。
【×間違った説】両親の愛情不足
これも厳しいしつけとセットでよく言われている間違った説です。
お父さんお母さんの愛情が不足しているから、子供が吃音になってしまった、と悩む必要は全くありません。
自分を責めないでください。
【〇有力な説】遺伝
吃音症の7割の人が、遺伝が原因という研究結果が出ています。
残りの3割が環境要因と言われています。
しかし、遺伝だからと過敏になる必要はありません。人間なので、当たり前のように様々な面が遺伝します。
体が大きかったり、肌の色が白かったり、人間は当たり前のように親から子へ遺伝します。
吃音もその中のひとつなんだ、くらいに捉えればよいです。
吃音は治るのか?
吃音症は治るのか? ですが、先に少し述べたように、子供の吃音の7~8割は、自然に治ります。
男女の割合でみると、以下のような割合になります。
<吃音発症から3年以内に自然回復する割合>
・男の子:約60%
・女の子:約80%
発症率もそうですが、自然回復率も女の子の方が高い傾向にあります。
では、子供の頃、吃音が治らなかった2~3割の人は、どうなるのか?
成人まで吃音が持続する人は、人口の1%存在する、と言われています。
そして、残念ながら有力な吃音の治療方法は、まだ確立されておりません。
私たちが現在思うことは、吃音を治すのではなく、吃音と上手に付き合う。
これを意識して娘と接するようにしています。
吃音は、皆が持つ性格の一部だと私は考えるようにしています。
優しい人もいれば、怒りっぽい人もいる。
力持ちな人もいれば、足が速い人もいる。
お笑い芸人のように上手にしゃべれる人もいれば、吃音の人のように少しだけしゃべるのが上手にできない人もいる。
何も特別扱いする必要は無い。
ただ、吃音が他の人の比べて劣っている、と考える人がいたら、私は全力でその人を正したいと思います。
「吃音の人は、ほかの人と比べて頭の回転が速い人なんだよ。知ってた?」ってね。
吃音の子供への接し方
吃音の子供と接する時、これだけはやって欲しくないことが2つあります。
(1)言いかけた言葉をさえぎること
(2)言った言葉を正すこと
どちらも吃音の子供のやる気をそぐ行為です。
聞き手としては、吃音でしゃべりにくい言葉を善意で言ってあげる、または正してあげるに過ぎないのですが、吃音の側に立って考えてみて下さい。
頑張ってしゃべろうとしているのに、その頑張りをくじかれるのは、耐えがたい屈辱です。
心が折れるきっかけになりかねません。
どうか、吃音の子供と接する時は、子供の話す言葉と最後まで聞いてあげて下さい。
辛抱強く聞いてあげて下さい。
慣れるまでは辛抱が必要かと思いますが、子供の気持ちを考えて、最後まで聞いてあげて下さい。
担当してくれる言語聴覚士は、当たり外れがある
子供のどもりについて、言語聴覚士へ相談した時期もありました。
言語聴覚士は、人が全く足りていないらしく、診察を予約しても半年待ちなんて当たり前のようです。(幸い、私たちの地域は、3か月待ちで診察を受けられました)。
しかし、言語聴覚士の診察を受けて、私たちの気持ちがプラスに働くことは全くありませんでした。
むしろマイナスに働きました。
(この辺は正直、どの言語聴覚士に当たるかどうかで当たり外れがあると思います。残念ながら私たちの当たった言語聴覚士は外れでした)
言語聴覚士との面談(診察)は、地域の公共施設で行われました。
言語聴覚士の男性は、
「なにボケっとしてるの。早く靴脱いでこちらの部屋に来なさいよ」
と言わんばかりの態度で、面倒くさそうに私たちを部屋へ誘導しました。
3か月待ってこの態度?
診察も30分もせずにあっさり終わりました。
面談の前に私たちは様々な情報を得ていたので、言語聴覚士から得られた有力なアドバイスは何一つありませんでした。
また心配だったら予約して、と言われ、施設を出ました。
正直、またこの人と話すの?という心境でした。
この人と話すくらいなら、自分で勉強する。
私たちの決断は早かったです。
言語聴覚士の世話にはならない。自分たちでこの子を守る。
ある意味、この態度の悪い言語聴覚士と出会ってよかったと思っています。
なぜなら、ここでこの言語聴覚士と出会っていなければ、自分たちでこの子を守るという強い決断が生まれなかったからです。
今でもこの決断は正しかったと思っています。
世界の吃音の著名人
・大江健三郎 日本で2人目のノーベル文学賞受賞者。
・重松清 直木賞作家。
・田中角栄 第64代65代、内閣総理大臣。
・マリリン・モンロー アメリカの女優、モデル。
・エルヴィス・プレスリー アメリカのミュージシャン、俳優。
・エド・シーラン イギリスのシンガーソングライター。
・チャーリー・シーン アメリカの俳優。
・タイガー・ウッズ アメリカのプロゴルファー。
吃音でありながら、活躍する世界の有名人は沢山います。
言葉を発しなくてよい作家に吃音の人が多いのはうなずけます。
一方、歌手に吃音の人が多いのも注目すべきです。
というのも、言葉を話す時には、どもりが生じるが、歌を唄う時には、どもらない。
ということも分かっています。
また、有名な俳優にも吃音の人がいることにも注目です。吃音の人たちの希望にもなりますね。
まとめ|どもりのある子は頭の回転が速い
2013年のオーストラリアの調査によると、統計的なデータから、どもりのある子供は、言語能力が高い傾向にあるようです。
「どもりのある子は頭の回転が速い」
吃音のスペシャリストである菊池先生が言うように、吃音で自信を失っている子供に対して、「君は頭の回転が速すぎるからどもってしまうんだよ」と伝えることで、少なくともどもりのある子供にとっては自信を回復するきっかけになると、私は思います。
もし、あなたの周りにどもりのある子供がいらっしゃいましたら、是非「君は頭の回転が速いんだね」と言葉をかけてあげて下さい。
少しでも吃音の人たちが自信を取り戻し、幸せに暮らせる世の中になってくれることを祈ります。
私が吃音について調べた中で、とても参考になった本を以下に紹介します。
この本の著者である菊池良和さんは、自身が吃音症であり、吃音のスペシャリストでもあります。
もし、もっと詳しく知りたい方は、下の本を読んでいただくと、もっと吃音について理解が深まると思います。
さらに、吃音症の人たちの苦悩をリアルに描かれたノンフィクションの本がこちらです。
少々目を覆いたくなるような悲しい事件も紹介されていますので、読む際には注意が必要です。
重度の吃音の成人が、吃音を治す過程をリアルにつづる章もありますので、もし頑張って吃音を治したい、と思った方は読んでみると参考になると思います。(ただし、大変な努力が必要と感じました)
吃音症の受験生が、英語のスピーキング試験に不利にならないよう、全国言友会連絡協議会が文部科学省へ要望書を提出しました。吃音を持つ大学受験生の英語スピーキング試験についての記事です↓
※全国言友会連絡協議会:吃音の人達で構成されるNPO法人です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。