『新釈 走れメロス 他四篇』感想レビュー!全5篇のあらすじ・登場人物の繋がりや無料で読む方法まで徹底解説
そんな理由で、読むのを迷っていませんか?
結論から言います。
読まないのは絶対にもったいないです!
本作は、国語の教科書で誰もが一度は目にした名作たちを、森見流のユーモアと「腐れ大学生」たちの屁理屈で極上のエンタメに昇華させた傑作短編集です。
しかも、森見ファンなら絶対にニヤリとしてしまう「あの先輩たち」の登場や、鳥肌もののリンク演出まで仕込まれています。
今回は、森見登美彦ファンである筆者が、本作の全5篇のあらすじや見どころ、登場人物たちの奇妙な繋がりを徹底的にレビューします!
記事の最後には、お財布に優しく「無料」で本作を楽しむお得な方法も紹介していますので、ぜひ最後までチェックしてみてくださいね。
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Contents
『新釈 走れメロス 他四篇』ってどんな本?あらすじと舞台を紹介
『新釈 走れメロス 他四篇』文庫本「走れメロス」というタイトルがついているため、太宰治のメロスだけを描いた小説だと思われがちですが、実は5つの近代文学の名作をオマージュした短編集です 。
『新釈 走れメロス 他四篇』の5つの元ネタ
まずは、収録されている5篇のラインナップと、元ネタを踏まえた「あらすじ」を紹介します 。
- 山月記(中島敦)
- 藪の中(芥川龍之介)
- 走れメロス(太宰治)
- 桜の森の満開の下(坂口安吾)
- 百物語(森鴎外)
① 山月記(原著:中島敦)
- 原典: プライドが高すぎて「虎」になってしまった男の話。
- 本作: プライドが高すぎて、大文字山で「天狗」になってしまった男の話。
② 藪の中(原著:芥川龍之介)
- 原典: ひとつの事件を巡って登場人物たちが都合のいい嘘をつくミステリー。
- 本作: ひとつの映画「屋上」を巡って大学の映画サークル内の登場人物たちがそれぞれの視点で証言する、泥沼の恋愛劇。
③ 走れメロス(原著:太宰治)
- 原典: 主人公メロス、メロスの無二の友・セリヌンティウス、人を信じられないディオニス王、それぞれの想いが交錯する、言わずと知れた友情の物語。
- 本作: 詭弁論部の芽野が、図書館警察長官に人質として捕まる親友・芹名のために、大学内の様々な追っ手から桃色ブリーフ一丁で大学構内および京都界隈を逃げ回る、阿呆極まる友情(?)の物語。
④ 桜の森の満開の下(原著:坂口安吾)
- 原典: 美しくも恐ろしい桜の狂気を描いた名作。
- 本作: 美しくも恐ろしい哲学の道の桜並木で出会った女と男を描いた物語。
⑤ 百物語(原著:森鴎外)
- 原典: 怪談会を催す話ではあるが、怪談話ではない。傍観者の主人公が、百物語の催しへ参加し、主催者の飾磨屋と芸者らしくない芸者の態度などを観察する。参加者同士の会話は弾まず、ぎこちない時間が流れる。
- 本作: 傍観者の主人公「森見」が、真如堂に集まり、鹿ケ谷法然院町のお屋敷で開催される百物語の催しへ参加する。謎の主催者「鹿島」の正体を憶測しながら、参加者たちを一歩引いた目線で観察するが、会話は弾まずぎこちない時間が流れる。
5つの物語の締めくくりとして、京都の夜にふさわしい、奇妙で少し幻想的な宴が幕を開けます。
『新釈』の舞台はやっぱり、我らの「京都・左京区」
『新釈』の舞台はおなじみ、鴨川や左京区周辺の京都です。
下宿の四畳半、大学の部室、鴨川デルタ、大文字山、叡山電車、琵琶湖疏水、哲学の道、蹴上インクライン、そして賑やかな学園祭……。
「森見作品といえばこれこれ!」
という、あの独特で愛おしい京都の風景がこれでもかと詰め込まれています。
森見ファンなら、地名を見ているだけであの「お馴染みの空気感」が脳内に蘇ってくるはずです。
『新釈 走れメロス 他四篇』の登場人物と相関図
ここでは、全編を通して奇妙にリンクし合う登場人物たちを、短編ごとに詳しく解説します。まずは、彼らの「阿呆な繋がり」の全体像を相関図でご確認ください。
『新釈 走れメロス 他四篇』登場人物と相関図山月記
斎藤 秀太郎(さいとう しゅうたろう):
煙草と珈琲を好み、留年と休学を駆使して11年間も大学に居座り続ける孤高の学生。器が大きいのか、それとも底抜けの阿呆なのか、誰も判別できない。大文字山のふもとの木造アパートに住む、本作の裏の重要人物。
夏目 孝弘(なつめ たかひろ):
京都府警川端署の若い巡査。物語では、銀閣寺交番の当番勤務にあたる。斎藤と同学年。
永田(ながた):
斎藤秀太郎に敬服する男。斎藤と同学年。
藪の中
鵜山 徹(うやま とおる):
映画『屋上』の監督。映画サークルの「三羽烏」の一人で、映画に並々ならぬ情熱を注ぐ男。
長谷川 菜穂子(はせがわ なほこ):
鵜山の恋人。映画『屋上』の主演女優。本人は裏方希望だったが、鵜山の強い希望に応じてスクリーンに立つことに。
渡邊 真一(わたなべ しんいち):
長谷川の元恋人。映画「屋上」の主演男優。
斎藤 秀太郎:
麻雀を通じて鵜山と出会う。鵜山に映画の撮影場所を教えた張本人。(『山月記』の斎藤と同一人物)
城ヶ崎(じょうがさき):
映画サークルの「三羽烏」の一人。『四畳半神話大系』でもおなじみの、あの強烈な自信家。
相島(あいじま):
映画サークルの「三羽烏」の一人。『四畳半神話大系』に登場する、陰湿かつ一筋縄ではいかないあの男。
💡 ここがファン必見! 映画サークル「みそぎ」の影
本編では明記されていませんが、城ヶ崎や相島が所属していることから、このサークルは間違いなく森見作品でおなじみの映画サークル「みそぎ」でしょう。彼らの悪躍(?)をもっと知りたい方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。
➡ 『四畳半神話大系』登場人物と相関図
走れメロス
芽野 史郎(めの しろう):
本編の語り手。阿呆学生。詭弁論部の一員でありパンツ番長。芹名の親友。好きな漫画は『北斗の拳』。
芹名 雄一(せりな ゆういち):
阿呆の双璧。もう片方の阿呆は芽野。詭弁論部の一員でありパンツ番長。
須磨さん:
わずか二ヶ月で詭弁論部の全員を籠絡した詭弁論部の部員。生湯葉とコーラをこよなく愛するヘビースモーカー。芽野と芹名もアプローチを計画したが、計画しただけであえなく頓挫した。
図書館警察の長官:
肌ツヤの良い小太りの男。男女の親友に裏切られた過去を持ち、人を信用できなくなった悲しきぽっちゃり。初恋の人の好物が生湯葉だったことから、もしかするとその相手は「須磨さん」だった可能性が浮上……?
図書館警察:
大学内の附属図書館の本を返さない不届きな学生に、容赦ない制裁を与える学生組織。大学の陰の権力者とも噂される。
詭弁論部:
世間から忌み嫌われることを一切意に介さず、のらりくらりと詭弁を述べ続ける阿呆の集団。
自転車にこやか整理軍:
自転車置き場の秩序を守るため、屈強な男たちで構成される謎の組織。図書館警察の傘下とも。
生湯葉研究会:
図書館警察長官の初恋の人が生湯葉好きだったことから、組織内に存在するらしい謎の会。長官の公私混同っぷりが伺える。
パンツ番長:
大学の一部のクラブ間で行われる、忍耐力を高めるための奇妙な修行。勝者のみがこの不名誉かつ栄えある称号を許される。歴代のパンツ番長戦において、「引き分け」で並立したのは芽野と芹名の世代のみ。
桃色ブリーフ:
本編の最重要キーアイテム。なぜ芽野がこれを穿いて疾走する羽目になるのかは、本編でお楽しみください。
📖 『夜は短し歩けよ乙女』とのリンク
作中に登場する「象の尻」などのフレーズにピンときた方は、かなりの森見通です! 詳細はこちらの記事で詳しく紹介しています。
➡ 『夜は短し歩けよ乙女』登場人物と相関図
桜の森の満開の下
男:
本編の語り手。小説を書くのが何より好きな腐れ大学生。斎藤秀太郎を師と仰ぐ。
女:
琵琶湖疏水沿いの「哲学の道」の桜並木で、男と衝撃的な出会いを果たす謎の美女。
斎藤 秀太郎:
男が尊敬する大学の先輩。(「山月記」の斎藤と同一人物)
百物語
森見:
本編の語り手。イギリスから語学研修帰りの大学生。(著者の森見登美彦ご本人)
F君:
私の友人。
斎藤 秀太郎:
大きな麦藁帽子を被る学生・百物語の参加者。(「山月記」の斎藤と同一人物)
芽野:
百物語の参加者。(「走れメロス」の芽野と同一人物)
芹名:
百物語の参加者。(「走れメロス」の芹名と同一人物)
永田:
百物語の参加者。(「山月記」の永田と同一人物)
鵜山:
百物語の参加者。(「藪の中」の鵜山と同一人物)
鹿島:
謎に包まれた百物語の主催者であり、学生劇団の主宰。彼の名前は誰もが知っているが、その素性を知る者はいない。ゲリラ演劇の主催者でもある。
📢 最後に明かされる(?)最大の謎
もしかするとこの鹿島、『夜は短し歩けよ乙女』に登場するあの「パンツ総番長」なのでは……? という説があります。しかし、その真相は京都の闇の中。ぜひあなたの目で確かめてみてください!
パンツ総番長については、こちらの記事をご覧ください。
➡ 『夜は短し歩けよ乙女』登場人物と相関図
『新釈 走れメロス 他四篇』の感想
『新釈 走れメロス 他四篇』を読み終えた私の感想をひと言で言うなら、これしかありません。
森見さん、あんた『走れメロス』だけふざけ過ぎ!!
偉大な森見先生に対して、こんな生意気な暴言を口走ってしまい本当に申し訳ございません。ただ、本作を読んだ方なら、きっと激しく同意してくれるはずです。
というのも、収録されている『山月記』『藪の中』『桜の森の満開の下』『百物語』の四篇は、驚くほど心から「真面目」に書かれているのです。あまりの文芸色の強さに、
「あれ? 読む本を間違えたかな? 著者は本当に森見先生だよね?」
と思わず表紙を二度三度と確認してしまうくらい、真面目。
それに引き換え、表題作の『走れメロス』はどうでしょう。 他の作品で真面目にやりすぎた反動が出ちゃったのか、突き抜けてくだらない(褒め言葉)のです。
本作の構成を並べると、見事なまでに以下のようになっています。
真面目 ➡ 真面目 ➡ 【不真面目(メロス)】 ➡ 真面目 ➡ 真面目
5人戦隊のど真ん中、ゴレンジャーのレッド(リーダー)のポジションに、この「圧倒的不真面目」が鎮座しているこの構成。
やっぱり森見先生は、どこかで全力でおふざけしたくなっちゃうんだなぁと愛おしくなります。
まだ本を読む前の人には「一体なんの話だ」と理解不能かもしれませんが、森見ファンなら間違いなく「買い」の一冊です。
正直に白状すると、純粋に爆笑できるという意味では『走れメロス』がダントツです。
しかし、だからといって初手から『走れメロス』だけを単体で読むのはおすすめしません。
ぜひ、1ページ目から順番に、真面目な日本文学オマージュを我慢して(おっと失礼!)読み進めてみてください。 3話目の『走れメロス』に突入した瞬間、一気に脳髄の目が覚めます。文字通りの「覚醒」です。
あまりのギャップに、不意打ちでブッと声を出して笑ってしまうのは生理現象なので仕方がありません。
そのため、真夜中のベッドの上での読書は非常に危険です。
笑い転げてもご近所迷惑にならない、安全な環境下でお読みください。
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💡 個人的なイチオシは『山月記』と『桜の森の満開の下』
劇薬のような面白さがある『走れメロス』ですが、個人的に心に深く刺さって大好きな話は、実は『山月記』と『桜の森の満開の下』の2篇です。
この2篇は、森見先生ご自身を少なからずモデルにしたのではないか、と思わされる影があります。 「何者かになりたい」と下宿の四畳半で悶々としながら、プライドと孤独の狭間で苦しむ登場人物たちの心情が、痛いほどリアルに伝わってくるのです。
「森見先生も、こんな風にたくさん迷い、もがきながらあの素晴らしい作家人生を歩まれてきたのだろうな……」
と思うと、ファンとしては心が揺さぶられて仕方がありません。
感想まとめ: 爆笑必至のエンタメ作品としては『走れメロス』が文句なしのイチオシですが、森見作品の真髄である「モラトリアムな若者の葛藤」やシリアスな情緒をじっくり味わえる『山月記』や『桜の森の満開の下』も、同じくらい強くおすすめしたい名作です!
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今回は、森見登美彦先生の傑作短編集『新釈 走れメロス 他四篇』のあらすじや登場人物の繋がり、そして感想レビューをお届けしました。
最後に、本作の魅力をもう一度おさらいしておきましょう。
- 「走れメロス」だけの本じゃない!
近代文学の名作5篇が森見流に超訳された贅沢な短編集。 - バラバラの話が裏で繋がる快感!
すべて同じ時間軸の京都が舞台で、おなじみの「腐れ大学生」たちが横の繋がりを見せる見事な群像劇。 - ファン悶絶のスターシステム!
『四畳半神話大系』や『夜は短し歩けよ乙女』のあの先輩やサークルがチョイ役で登場。 - 圧倒的なギャップ萌え(?)
四篇の真面目な文芸作のど真ん中に、突き抜けてくだらない「桃色ブリーフのメロス」が鎮座する奇跡の構成。
「近代文学のパロディだから難しそう……」
と敬遠していた方も、一歩足を踏み入れればそこはいつもの愛おしき「阿呆な京都の街並み」です。
1ページ目から順番に読み進め、3話目のメロスでぜひ周囲を気にせず笑い転げてください!
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最後までお付き合いいただきありがとうございました。



